昔ながらのシンプルな原材料と製法の老舗、 「長崎カステラ御三家(創業年)」ともいわれる「福砂屋(1624)」「松翁軒(1681)」「文明堂総本店(1900)」のカステラを食べ比べ、特徴や違いをまとめてみました。
カステラは「ナマモノ」
長崎カステラは常温保存可能ですが、ケーキと同じくナマモノ。
ブランデーケーキもどんどんアルコールが浸透して、風味が増していくのと同じように、カステラも製造日からどれくらい経っているかで、同じお店のカステラでも全く異なる風合いに感じることもしばしば。
長崎カステラの場合は、新鮮であるほどザラメの粒がしっかり残るジャリジャリ食感が味わえますが、徐々にザラメが生地に溶け込んでいくので、日数が経つほどに甘さとしっとり感が増してきます。
といっても商品に記載されているのは、賞味期限のみで製造日は不明。
今回は、たまたま賞味期限が近い御三家が手に入ったので、賞味期限を目安にあえて食べ比べてみることにしました。
比較したカステラ
今回比較したのは、「長崎カステラ御三家」の定番カステラ。
【福砂屋】カステラ0.6号
【松翁軒】カステラ0.3号
【文明堂総本店】カット包装カステラ
賞味期限は季節によって変動するお店もあるらしいですが、賞味期限まであと12日(松翁軒だけ13日)の「長崎カステラ御三家」を比較してみました。
サイズは違うのであしからず…
原材料のこだわり
シンプルに、砂糖、卵、小麦粉、水飴の4つの原材料だけで作られる御三家のスタンダードカステラ。
余計なものを一切加えないシンプルゆえに、どのお店も並々ならぬこだわりですが、【文明堂総本店】は、商品の原材料名表記でも、公式ホームページでも、より強いこだわりを打ち出している気が。
【福砂屋】だけは、砂糖よりも鶏卵の使用が多くなっています。
【福砂屋】 | 鶏卵(国産)、砂糖、小麦粉、水あめ |
【松翁軒】 | 砂糖(国内製造)、卵、小麦粉、水飴 |
【文明堂総本店】 | 砂糖(ザラメ糖を含む)(国内製造)、卵(長崎県産)、小麦粉(小麦(国内産))、もち米水飴(もち米(国内産)) |
生地の違い
オモシロいことに御三家のカステラは、見ただけで違いがわかるほどに、生地に特徴があります。
生地は、味の決め手のひとつとなる食感を左右します。
【福砂屋】
断面だけでなく箱を開けた瞬間、上面だけ見てもダントツでキメ細やかさがわかる生地。
独自の「別立法」で焼き上げるだけあって、ふっくらとしたなめらか食感。
【松翁軒】
圧倒的にキメが粗く、力強さを感じるしっかりとした生地。
保水性に優れた特殊なカステラ専用粉を使用した、もっちりとした食感。
【文明堂総本店】
「福砂屋」「松翁軒」の中間のような、スタンダード生地。
グルテン形成が少ない小麦粉を使用したあっさりめの食感で、2店に比べ個性に欠ける感じですが、このシンプルさこそが「文明堂」。
ザラメの違い
口の中で一番大きなザラメの粒を感じたのは、【文明堂総本店】なのですが、いざ底面をひっくり返してみると、紙にくっついてしまったのかと、思わず見返すほどにザラメが一番見当たらない。
部位によってザラメ感にムラがあるのかな、とさえ思ってしまいました…。
長崎カステラの象徴のような底面のザラメは、焼き上げる時に生地に溶けきれずに沈んだもの。
圧倒的にザラメの粒を見て取れるのは【松翁軒】ですが、食べるとどれもそれなりにザラメの粒を感じるから不思議。
しっかりめの【松翁軒】の生地には、見た目にもわかるくらいのザラメ感が必要なのでしょうね。
歯ごたえ、舌触りが最適なサイズのザラメを厳選しているという【文明堂総本店】、見た目にはザラメをそれほど感じないけれど、底面の焦げ層にしっかりとザラメが残る【福砂屋】。
見た目のザラメ感に関係なく、どのカステラもそれぞれ生地とザラメのバランスが絶妙。
どのお店も生地の質に合わせて、粒の大きさや配合にこだわっているのを感じました。
甘さの違い
砂糖の配合の多さに驚く人もいるかもしれませんが、砂糖と水飴だけでつくられるカステラは、蜂蜜やみりんを含むカステラよりも、口当たり滑らかで上品な甘さに仕上ります。
ほかのお店のハニーカステラと比べると、甘さの深みの違いがよくわかると思います。
御三家の中でも一番あっさりしているのは、やはり【文明堂総本店】でしょうか。
【松翁軒】【福砂屋】の順で、どんどん甘さの深みも増していく気がしました。
時間がたつほどに、ザラメが生地に溶け込んでいくので、今後賞味期限が近づくにつれ、より甘さは際立ってくることでしょう。
ちなみに、水飴は砂糖では賄いきれない、生地のしっとり感を生み出します。
まとめ
同じシンプルな原材料を使用しながら、高い技術力で全く異なるカステラを生み出している「長崎カステラ御三家」。
長崎カステラを手に入れるだけでも大変なのに、老舗の御三家を、しかも賞味期限も近いものを食べ比べできたのは、とても貴重な体験でした。
甘さが違いの決め手となるのかと思いきや、意外にも左右したのは食感の要となる生地とザラメのバランス。
予想以上に違いがはっきりしていて驚きましたが、特徴や違いを参考に、好みや気分で是非お取り寄せしてみて下さい。
【福砂屋】 | 1624年~ | ふわふわの繊細カステラ |
【松翁軒】 | 1681年~ | 弾力あるしっかりめのカステラ |
【文明堂総本店】 | 1900年~ | あっさりめのスタンダードカステラ |
「福砂屋」がおすすめの人
たかがカステラと高を括っていた若かりし頃、お土産でいただいて衝撃を受けたのは「福砂屋」のカステラ。
スイーツがあふれる今、昔ほどの感動はないものの、見た目にも美しいきめ細かさと、箱から溢れんばかりのボリューミーでふわふわの生地は、唯一無二の職人技。
ふわふわの生地を邪魔しない程度に、存在感を放つザラメが絶妙で、御三家比較したことで、より技術力の高さを痛感しました。
封を開けた瞬間の香りも格別で、パッケージや包装紙にさえ、細やかな配慮が見られるのは、さすが一番の老舗といった感じ。
他では味わえない、ふわふわのザラメカステラが食べたいなら、断然「福砂屋」です。
一番人気だけあって、公式サイト以外でもお取り寄せできるのも、嬉しいですね。
福砂屋オンラインショップ
大丸松坂屋オンラインショッピング
「松翁軒」がおすすめの人
繊細なふわふわ生地の「福砂屋」とは正反対に、キメが粗くしっかり弾力のある生地が特徴の「松翁軒」。
モチっとした噛み応えある生地に負けない、しっかりとしたザラメ感と上品な甘さ。
焦げの中にも、奥深いコクが感じられるザラメカステラは、女性らしい「福砂屋」に対し、男性的な「松翁軒」といった感じ。
弾力があり、もっちりとした食感を望むなら、断然「松翁軒」です。
老舗とはいえ、チョコラーテをはじめ、魅力的な期間限定カステラが多いのも特徴。
「Amazon」「楽天市場」などではお取寄せが難しいですが、季節ごとの味を公式ホームページでチェックするのも楽しいかも。
「文明堂総本店」がおすすめの人
全国各地に暖簾分けされ点在する「文明堂」の本家ということで気になっていた「文明堂総本店」。
同じ「文明堂」でも屋号によって微妙に味が異なるとのことで、これまで食べていた「文明堂(銀座や東京)」との違いを少しは期待したのですが、本家を食べ比べてみても、やはり「文明堂」。
原材料にこだわっているだけあって、それなりに上品な風味は感じるものの、元々「文明堂」の長崎カステラでは物足りない私には、残念ながら魅力に欠けました。
「福砂屋」「松翁軒」と比べると、個性に欠ける感じですが、このシンプルさこそが、全国的に愛されてるゆえんなのかもしれません。
カステラ巻や和菓子など、ほかにも多くの銘菓を展開している老舗は、「文明堂総本店」だけですね。
お取寄せの際は「文明堂東京」などと間違えないように。
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